戦略アナリシス

戦略アナリシス

戦略アナリシスはDXの基本がめちゃくちゃ詰まっているページだと思います。「将来状態を定義」せずに「現状を分析(ビジネスニーズの理解)して対策をするだけの活動」をしている人にはこのセクションは10回くらい繰り返して読んで欲しいと思います。将来状態の定義は、ステークホルダーと確実に齟齬がないようにしなければいけません。昨今の活動はアジリティが求められる通り、正解の活動が分からないことが多いです。だからこそ、現状の課題を起点に対策をした場合いベクトルが将来状態に向かっていることがとても大事です。ベクトルが不明な状態での活動は、課題に対して何らかのポジティブな結果をもたらしているとしても、どこまでやればいいか、いつまでやればいいのか、遅れているのか、正しい活動なのかの判断が将来状態の定義がされていなければ判断できないってことです。


戦略アナリシスは、ビジネス・ニーズへ対処するために必要な将来状態およびそれへの移行状態を定義することに焦点を合わせると書かれています。戦略アナリシスは、所与のチェンジに対して要求アナリシスおよびデザイン定義のをするときのコンテキストつまり文脈を提供するとあります。戦略アナリシスが継続的なアクティビティなのは、ビジネス環境の変化が激しいので将来状態も変化するってことです。当然と言えば当然な訳です。BABOKでは、将来状態だけでなく現状についても「チェンジの開発および実装中はエンタープライズの現状も変わらずにいることはほとんどない」と書かれています。ビジネスアジリティが求められますね~。


①現状を分析する:コンテキストを定義する

チェンジの出発点は、チェンジがなぜ必要かを理解することであると書かれています。未来永劫絶好調ならチェンジの必要性ないですもんね。現状を変えなければいけない問題を特定(=ビジネスニーズを理解)が出発点です。また、チェンジは既存ステークホルダー、プロセス、テクノロジー、ポリシーのコンテキストで発生するため、チェンジに先立ってエンタープライズの現状を分析して理解する必要があると書かれています。チェンジのためのベースラインと文脈を設定しましょう。BABOKの内容とエンタープライズアーキテクチャの内容を理解すると鬼に金棒な気がします。


ビジネス・ニーズの定義はあらゆるビジネスアナリシスの作業の中で最も重要なステップと記述されています。当たり前ですが、ビジネスニーズは常に特定のステークホルダーの視点ではなく、エンタープライズの視点で表現される必要があります。声のでかい影響力が特大な人がいて全社視点で整理されずに予算が付くみたいなことはダメですよ・・・ビジネスニーズは一般に課題にの記述の中に隠れている前提条件と制約条件が何であるかも問うべきであるとされています。私は与件とよく言っているのですが、DXだと場合によっては与件も変える必要があるので整理は重要です。


組織構造と組織文化はDXで最難関のテーマなんじゃないでしょうか。特に組織文化はやっかいです。組織文化ってその中にいる人やプロパー社員の人って世の中との相対的な評価がとても難しいと思います。って意味だと組織文化を軸とスコアで定量化してくれるサービスなんてあったらそれなりにニーズがありそうな気がします。DXの成功はこのトピックがめちゃくちゃ大事です。BABOKにもっと攻略パターンみたいな情報が追記されて欲しいところです。


能力とプロセスもかなり大事な内容になっています。が、かなり情報は足りてない気がします。チェンジを考えるときに現状の能力やプロセスでは難しいことがよくあります。決してチェンジの与件にしてはいけません。それを避けるために、いかに軸を設定してビジュアライズしてステークホルダーの理解を促すかが大事だと思います。別項目で整理されているポリシーは、プロセスにアジリティがない大きな課題となっていることがあります。ポリシーは法律であったり社内ルールを守るであったり何らかの意図があり遵守されていますが、それがアジリティを下げると戦えない時代です。


②将来状態を定義する:ビジネス目標を定義する

目標のあるチェンジはすべて成功についての定義(=ビジネス目標)を持たなければならないです。現状分析をエンタープライズのあらゆるコンポーネントに対してみていくので将来状態もエンタープライズのあらゆるコンポーネントに対して定義します。


ゴールは分析されると、より具体的な目標に変換されて目標がSMARTであることが重要です。

  • Smart  : 具体的
  • Measurable : 測定可能
  • Achievable : 達成可能
  • Relevant : 関連している
  • Time-bounded : 有限時間

制約条件やポリシ-の項目があるのですが、制約条件さえトップダウンでぶち壊さないとDXできない場合があるのでアップデート希望の項目になります。ポリシーには、時には既存のポリシーを変更しなければ検討しえないソリューション案もありうるとありますね。


将来状態を定義するときに、ビジネスアナリストはソリューションの潜在価値を特定する必要があります。潜在価値とは、ソリューションの便益から運用コストを引いたものです。潜在価値の定義は私自身まだ勉強したい内容で、いつも算出にいろいろ前提を置くのですがうまくできている気がしません。特に前提として〇割の〇〇が~みたいなことを書いてるときに、ここら辺ってPOCなどで見ておく必要あるよなぁとか思いつつもPOCやる時間がないみたいな。


③リスクをアセスメントする:チェンジ戦略前にリスクを把握

アセスメント(分析やマネジメントを含む)した結果はチェンジ戦略のインプットとして利用されます。BABOKではリスクはマイナスの結果を生み出す可能性のある不確かなイベントに対して使われると定義されています。


リスク許容度は、ステークホルダーやエンタープライズが潜在価値と引き換えにどれだけの不確かさを引き受ける意思があるかで3分類されています。同じ企業でもユーザ部門はリスクテイクする傾向にありシステム部門はリスク取りたくないってパターンをよく見ます。

  • リスク回避型:不確かさを受け入れない
  • リスク中立型:リスクが発生しても損失につながらないなら受け入れる
  • リスク愛好型:より高い潜在価値と引き換えに、より大きなリスクを受け入れる

リスクに対してどのような対策を取るかですが、BABOKではリスクに対してチェンジの便益を追求しないパターンもあるよと言っています。チェンジがDXのように生き残りをかけるチェンジであれば、そんなこといってられないと思いますが、時期や社会環境次第ではそんな意思決定もあるのかなと思います。


④チェンジ戦略を策定する:ビジネスケースにまとめる

いくつかのチェンジへのアプローチを作成し、評価し、その後、推奨されるアプローチを1つだけ選択するタスクとなります。現状と将来状態が既に定義されている場合、より簡単になるというような記述があるのですが、定義される前にチェンジ戦略は難しいのではないでしょうか。だってチェンジの方向性が決まっていないってことなので・・。チェンジ戦略はビジネス・ケース(いわゆる稟議)や作業範囲記述書(SOW:Statement Of Work)、エンタープライズの戦略計画書の一部などで表現されます。


ソリューションとはエンタープライズがニーズを満たせるようにするチェンジの成果であるとあります。ソリューションスコープとはソリューションの境界と定義されています。ソリューションスコープは、より多くの情報が発見されるに伴い、活動を通して発展する可能性があるとされています。


ギャップ分析は、現状の能力と将来状態の能力との違いを特定するとあります


チェンジ戦略は、現状から将来状態へエンタープライズを変換するために使われる計画とあります。潜在価値(予想される便益から運用コストを引いたもの)は、チェンジのための稟議作成の主要な要素となります。


移行状態は1つのチェンジを通して達成されるものではなく、時間をかけて達成していく必要があるとあります。なかなか難しいことが書いてあります。エンタープライズが一つあるいわ複数の移行状態で機能しなければならないとも書いてあります。実際はそうですよね。