引き出しとコラボレーション

引き出しとコラボレーション


引き出しとは、ステークホルダーや情報源から情報を引き出すって意味で使われています。コラボレーションとは二人以上の人が共通のゴールに向けて共同で作業する行為という意味で書かれています。引き出しとコラボレーションの作業は決して工程みたいなフェーズではなく、作業が続いている間は継続して行われるタスクになります。


①引き出しを準備する

引き出しを誰からどうやって実行するかの計画になります。ステークホルダーが提供されるべき情報を持っていることや実行しようとしているアクティビティーの性質を理解していることを確認するタスクになります。どの範囲の話についての情報を引き出すのか、引き出しのスコープを理解する必要があります。活動の与件としてステークホルダーとスコープを握ることがとても重要だと思います。スコープに齟齬があると、私達ビジネスアナリストの活動は有限なので活動のアウトプットについて場合によっては不満足の評価になってしまうので注意が必要なところです。ステークホルダーを意識づけるというところは書いてあることを読んでも、なかなか経験が浅いと理解ができないかもしれません。簡単に言うと大事な関係者は引き出しに積極的に協力関係を築けるようにコミュニケーションを気を付けようです。もっと簡単に言うと、協力してくれることで関係者にメリットがあることを関係者に理解してもらうことで積極的な協力関係を勝ち取ろうってことです。スポンサーは計画した引き出しイベントを承認したり却下したりする権限や特定のステークホルダーの参加を許可したり要求したりする権限を持ちます。また、PMは適切な人およびリソースが引き出しの実行に確実に利用可能であるようにする責任があるとBABOKでは書かれています。

②引き出しを実行する

引き出しの3パターンが紹介されています。協業型はステークホルダーにインタビューをしたりと直接のやり取りを伴う方法です。調査型データマイニングなどでチェンジに関与するステークホルダーが直接には認知していない資料や情報源から情報を体系的に発見し調査する方法です。実験型は観察(エスノグラフィー)や概念実証(POC)、プロトタイプなどやってみて分かる情報を発見する方法です。アジリティを持った活動を行う場合、方針などを立てる前に方向性を間違わないために実験型を採用する場合は最近増えているのではないでしょうか。


フォーカスグループ:マーケティング・リサーチで情報を収集するために集められたグループを指します。プロダクトの感想などをインタビューや行動観察から知見を得ることを目的に開催します。


③引き出しの結果を確認する

確認の目的は誤り、抜け、不一致、曖昧さの発見となります。引き出しの結果は異なるソースから引き出した内容間で整合性が取れている必要があります。BABOKでは、ビジネスアナリストは、情報が一貫性を持ち性格に表現されていることを確認するために、複数の引き出しアクティビティーを通して集めた結果を比較するとあります。


ワークショップ:あらゆる公式度で、引き出しの結果(未確認)をレビューするために使用するテクニックになります。あらかじめ定めたアジェンダ、スクリプト、シナリオ・テストを使用して、引き出しの結果をウォークスルーすることもある。また、参加者からフィードバックが要請され、それが記録される。


④ビジネスアナリシス情報を伝達する

ステークホルダーがビジネスアナリシス情報の共通の理解を確実に持てるようにすることと書かれています。ポイントはステークホルダーが確実に情報を理解して同意を得るという点です。さらっとめちゃくちゃ難しいことが書かれているのですが、相手が理解できる言葉、粒度感や解像度で相手のことを考えてコミュニケーションしましょうということです。伝える相手が異なれば興味も異なる訳です。ビジネスアナリシス情報だけでなくコミュニケーションの基本かもしれませんね。伝える形式として3つ紹介されています。「①公式の文書:通常、組織のテンプレートに基づいて作成され文章、マトリクス、図などを含み安定して使いやすく長期的な情報の記録ができるもの」「②非公式の文書:チェンジ・イニシアチブの中で使用されるが、組織の公式のプロセスでは必要とされない文書、図、マトリクスなどを含む」「③プレゼンテーション:チェンジのゴール、ソリューションの機能、あるいは意思決定のための情報を理解するのにふさわしい大まかな概要を提供する」伝える方法として3つ紹介されています。「①グループ・コラボレーション:関係のあるステークホルダー・グループにパッケージを一斉に伝達するために使用する。情報および関連する課題について素早い議論が可能になる」「②個別コラボレーション:1回に一人のステークホルダーにパッケージを伝達するために使用する。グループ作業が実現可能でなかったり、生産的でなかったり、あるいは最良の結果を生み出しそうになかったりする場合に、情報を個別に理解してもらうために使用する」「③E-mailまたはその他の非口頭的手段:成熟度が高く、口頭での説明が全くあるいはほとんど必要でない情報がある場合に、パッケージを伝達するために使用する」とあります。


ワークショップ:フィードバックを表明する機会、また必要な調整、対応、処置を理解する機会をステークホルダーに提供するために使用する。


⑤ステークホルダーのコラボレーションをマネジメントする

ステークホルダーが特定され分析すると、ステークホルダーのコラボレーションのマネジメントが始まります。要はステークホルダーの熱量を冷まさないように頑張れってことです。活動に対する期待値が下がったり、他の優先タスクが突発的に発生した時などは要注意です。上質な情報が提供されなくなったり、逆境や障害に対する強いマイナスの反応、チェンジへの抵抗、ビジネスアナリシス作業への支援および参加の欠如、ビジネスアナリシス情報が無視されることなどが具体的に有害な影響として紹介されています。熱量が冷めてないかは、継続的にモニタリングが必要とされています。例えば、他の作業に回されていないか、品質が悪い情報しかくれない、承認が遅いなどが挙げられています。熱量が冷めてない、本当にうまくいっている状態は、自分の声が届いている、自分の意見が取り上げられている、自分の貢献が認められていると全てのステークホルダーが感じている状態と定義されています。


教訓:ステークホルダーの満足や不満を理解し、仕事上の関係改善の機会を提示するために使用する。

協働ゲーム:参加者を安心で楽しい状況に一時的に入れることで、チームワークとコラボレーションを高めるために使用する。